病気の話

こころ動物病院:ペット写真6
甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)
甲状腺の委縮や壊死、炎症が原因で機能低下を起こし、甲状腺ホルモンが不足する病気で、イヌに多く見られます。高齢犬では潜在的にかなりの割合で発症すると考えられていますが、症状が漠然としているために、飼い主が気づかずに無治療となっている例も多いと思われます。体重増加や、運動不耐、覇気がないなどの症状は、年のせいだと感じてしまうかもしれません。

また、甲状腺機能低下症のイヌは、脱毛、毛包虫(アカラス)症や膿皮症(細菌感染)、マラセチア(酵母菌)性皮膚炎、アトピー性皮膚炎などの皮膚症状を伴うことも多く、年齢や病歴などにより、この病気が疑われることも多いのです。

健康診断の血液検査でもこの病気を検出することができます。甲状腺機能低下症症例の70%以上で高コレステロールが認められます。7歳を過ぎたら、最低でも1年に1回は血液検査を受けると、病気の早期発見につながります。

甲状腺機能低下症が疑われたら血液による内分泌学検査を行います。当院では甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺ホルモン(FT4)を測定して総合的に判断しています。

治療は、甲状腺ホルモン製剤を1日2回投与します。ホルモン量が適正になると、今まであまり散歩したがらなかったイヌが喜んで散歩に行くようになったり、適正体重になったり、皮膚症状が軽減あるいは治癒したりします。
クッシング症候群(くっしんぐしょうこうぐん)
別名:副腎皮質機能亢進症(ふくじんひしつきのうこうしんしょう)
8歳以上のイヌで比較的よくみられますが、ネコにもまれに起こります。この病気は副腎(腎臓のそばにある小さな臓器)皮質からコルチゾール(ホルモンの一種)が過剰に分泌されることによって発症します。

クッシング症候群は原因によって、以下のように分類されます。
   (1)   自然発生クッシング症候群
    (1-a) 下垂体依存性クッシング症候群
    (1-b) 副腎依存性クッシング症候群
   (2)   医原性クッシング症候群

(1-a) 下垂体依存性クッシング症候群
イヌのクッシング症候群の80~85%を占めます。多くは脳下垂体の良性腫瘍が原因です。脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に分泌され、その結果、副腎からコルチゾールが過剰に分泌されます。

(1-b) 副腎性クッシング症候群
副腎腫瘍が原因で良性と悪性の割合は半々です。通常は片側性です。

(2) 医原性クッシング症候群
ステロイド製剤を長期間、大量に投薬した結果、発症します。

症状:原因にかかわらず以下のような症状がみられます。

多飲多尿、多食、腹部膨満、筋力低下、左右対称性脱毛、皮膚の菲薄化、石灰化(カルシウム沈着を起こして硬くなること)、色素沈着、免疫低下による細菌感染、キズや皮膚病が治りにくいなど。

診断:血液検査やその他検査でこの病気が疑われたら、ホルモン測定や画像診断などの特殊検査を行って診断を確定します。

治療:原因が医原性の場合は徐々にステロイド製剤を減薬していき、最終的に投薬を中止します。自然発生の場合は、内科的治療(投薬)と外科的治療(手術)があります。

内科的治療は現在、当院ではトリロスタンという薬を使用しており、副腎からのコルチゾール放出を抑制させて、全身状態の改善を目的に治療しています。薬の効果は個体差があるので、定期的な検査が必要です。

外科的治療は、原因となっている下垂体あるいは副腎を切除する手術を行います。手術後はいきなり副腎皮質機能低下症となるので、1カ月程度は厳重なモニターと不足したホルモン補充の治療が必要となります。その後は、体の代償機構により正常化していきますが、生涯ホルモン投与が必要となる場合もあります。この手術と術後管理は大学病院などの二次診療施設での対応となります。
膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)
膝蓋骨脱臼とは・・・
膝蓋骨(膝のお皿)が太ももの骨の溝から外れる病気で、内側に外れる内方脱臼と外側に外れる外方脱臼があります。内方脱臼は小型犬種、外方脱臼は大型犬種に多く見られます。

診断:確定診断は身体検査所見およびレントゲン検査所見に基づいて行います。

身体検査)身体検査所見は様々で、脱臼の程度により異なります。
 Grade 1 膝のお皿は通常、正常な位置にあるが、指で押すと脱臼する。
 Grade 2 脱臼していることが多く、指で戻すと戻る。
 Grade 3 常に脱臼していて、指で戻すと戻るが、すぐに脱臼する。
 Grade 4 常に脱臼していて、指で押しても戻らない。
      足を最小限にしか着くことができない(骨の彎曲があることもある)

レントゲン)膝蓋骨が太ももの骨の溝から脱臼し、正常な位置にないことを確認します。

治療:内科的治療と外科的治療があります。治療法の選択は症状や身体検査所見および患者の年齢によって異なります。症状のない高齢犬で手術が必要になることは滅多にありません。一方、若齢犬や既に痛みの症状がみられる動物では消炎鎮痛剤などの内服(内科的治療)で経過観察をして頂く場合もありますが、根本的な解決のためには手術(外科的治療)が最も有効です。

外科的治療は、浅くなっている太ももの骨の溝を削り、深くし、溝を造る方法や脛骨稜(すねの上の出っ張った部分)の骨を切って正常な位置に移動させたり、重症例では湾曲した大腿骨を切り、骨がまっすぐになるように形成する方法をとります。一般的には脱臼の程度や骨変形の存在により上記のテクニックを組み合わせる必要があり、そうすることで膝の安定化が図れ、非常に良好な経過が期待できます。この病気はそのほとんどが先天的であると同時に、進行性であるため、当院では若齢犬(特に3歳以下)には積極的に外科的治療をお勧めしています。それは、特に成長段階にある若齢犬では、膝関節の安定化と筋肉、骨格系の大幅な改善が期待できるとともに、早期であればある程、術後の回復も早く、脱臼の再発も少なくなり、その後の十数年を痛みなく過ごすことが可能になるからです。
僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)
【心臓機能の基礎知識】
心臓は生命の維持に必要な血液を全身に送り出すポンプの役割をする重要な臓器です。全部で4つの部屋からなり、各々の部屋には大きな血管が付属し、規則正しく収縮と拡張を繰り返す筋肉(心筋)でできています。

【心臓の構造と血液の流れ】
こころ動物病院:心臓のイラスト血液の循環は、全身から帰ってきた血液が、まず右心房(1)に入り、三尖弁(2)→右心室(3)→肺動脈弁(4)→肺動脈(5)→肺(6)→左心房(7)→僧帽弁(8)→左心室(9)→大動脈弁(10)→大動脈(11)と流れ再び全身にめぐっていきます。

心臓の病気といっても先天性の心奇形や寄生虫病(フィラリア症)、弁膜症、心筋症等があります。心臓に寄生する虫(フィラリア)は飼い主様の知識の向上、予防医学の発達により近年ではめったに見られなくなりました。

弁膜症とは心臓内にある4つの弁(三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁)がうまく閉まらなくなったり(閉鎖不全)、狭くなったり(狭窄)する疾患で原因は不明です。犬(特に高齢期)では僧帽弁の閉鎖不全が多くみられ、あらゆる犬種に発生しますので、様々な心臓病の中から犬の僧帽弁閉鎖不全症についてご説明いたします。

【僧帽弁閉鎖不全症】
心臓病の1つである僧帽弁閉鎖不全症は、この弁が完全に閉鎖できず、左心室が収縮する際に全身へ送り出されるべき血液の一部が弁の隙間から左心房へ逆流する状態をいいます。

症状
<発生初期>
・無症状。・心臓の雑音(血液が逆流する時の音)→聴診器で聴くことができます。
<発生中期>
・心臓の雑音→初期よりも大きな雑音を聴診器で聴くことができます。・運動を嫌がる、痩せてくる、食欲不振などの症状が見られるようになります。
<発生末期>
・心臓の雑音→胸に手を当てただけでも雑音が分かる様になります。・肺に血液がうっ滞し、肺に水が溜まることがあります(肺水腫)。・頻繁な咳や、舌の色が紫色(チアノーゼ)になる程の呼吸困難を起こすことがあり、放置すると心不全という状態に進行し、死亡する可能性が高くなります。

上記の症状がどれか1つでも見られたら当院にご相談ください。

診断:身体検査およびレントゲン検査、心臓のエコー検査を行います。

(1)身体検査:心臓や呼吸の音を聴診したり、口内の粘膜や舌の色を見てチアノーゼを起こしていないか調べます。

(2)レントゲン検査:横向きと仰向けの胸部レントゲン写真を撮り、心臓の大きさや血管、気管支の様子を見ます。

(3)心臓のエコー検査:実際に心臓内の弁の動き方や血液の逆流を観察することにより、病気の進行の程度を知ることができます。

治療:心臓病の進行程度により血管拡張薬や強心薬、利尿薬などを組み合わせて使用する内科的治療食事療法が治療の中心となります。
・ほとんどの心臓病において生涯薬の投薬が必要となります。
・食事に関しては、ナトリウム(食塩)の制限が必要です。心臓機能が低下しているときに塩分の多い食事をすると飲水量が増え、排泄されない水分が体内に蓄積して心臓に負担をかけます。例えば、人が食べる食事は犬にとって塩分が多く心臓病の犬に与えると危険です。

《日常生活での注意点》
・心臓病は生命に関わる病気です。日常生活においては極力ストレスを与えない工夫を心掛けてください。
・散歩や運動をするときは他の犬などに興奮しない様にしたり、途中で疲れてしまう様な場合は長い距離はやめるなど、飼い主様が注意して運動制限をしてあげなければいけません。
・長時間の車での移動や、周囲の環境が一変してしまう旅行などは落ち着けなかったり、興奮したりして心臓に負担をかけますので、できれば避けたいものです。
・心臓病は進行性の病気ですから、早期発見・早期治療が肝心です。中高齢(7歳以上)では、少なくとも年に1回は定期的に病院で検査を受けるようにしましょう。当院でも定期健康ドックを実施しておりますので、お気軽にご相談ください。